色やけ直し | 着物の補修・加工
色やけ直しとは?
色やけは、着物だけに限った事ではなく衣類全般に起こり得る症状です。例えば、長期間タンスの中に保管していただけの着物が色やけしてしまったという事もあります。これは、何らかの原因によって、タンス内にガス(揮発性のもの)が発生し、そのガスの影響により色が退色してしまったという事が考えられます。
また、このガスは良かれと思って入れている防虫剤などが複合的に絡み合って起きる場合もありますので、防虫剤を入れられる際は注意が必要です。ちなみに、余談ではありますが絹は虫にとってあんまり美味しいものではないそうなので、防虫剤は基本的には必要ないと言われております。むしろ防虫剤よりも防湿剤の方が着物にとっては良いと思います。
着物が色やけしてしまいやすいポイント
・長期間タンスにしまったままになっている
・タンス自体に日の光があたっている
・虫干しなどをする際に直射日光にあたってしまう
また、上記とは別に経年劣化と呼ばれる退色もあります。藍染などの着物で「藍は生きている」という表現をされる事があるように、染め上がった着物も時と共に染料が変化していく場合があります。こちらは染め方や染料などによっておこる場合がありますので、注意をしていても出てきてしまう症状とも言えます。こちらについては、保証の範囲内も色々かとは思いますが、ご購入店舗にご相談されると良いと思います。
ビフォアアフター
よくあるご質問|色やけ直し編
Q:右袖と左袖の色が変わってしまっているのですが、直りますか?
A:畳んだ際に、下になる部分がガスなどの発生により退色したり、あるいは上になっている部分が、光の差し込みなどにより退色したりする場合がありますが、こちらも着物の状態に合わせて処置を行う事はできますので、ご安心下さい。
Q:反物のままの状態でも色やけはしますか?
A:畳んである時と同様に、反物の内側と外側では湿度や環境が異なる事から色やけする場合がありますので、反物や洗い張りあがりのものにも注意が必要です。こちらも、色やけしている場合は、ご希望に合わせて処置を行う事ができますのでご安心ください。
Q:色が抜けていたので、色掛けを勧められたのですが
A:今の着物の色が気に入らない場合や部分的に処置をすると費用が高くなる場合などに、全体的に色をかけて違う色にするという方法もあります。
※その他のご質問に対してもお答えしておりますのでお気軽にお問合せ下さい
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色やけ直しの工程
事前点検にて全体的な色やけ直しの処置が適当だと判断された場合に以下のような工程で作業を進めさせて頂きます。
① 解き端縫い
洗い張りを行う前に、着物を反物の状態に戻す必要がありますので、着物を全て解き、反物の状態にするために生地を縫い合わせる端縫いが必要になります。
着物の寸法などが確定していない場合などは、洗い張り後に、この端縫いの状態でお戻しして寸法や活用方法が決まってから縫い上げる事も可能です。
② 洗い
端縫いされた反物上のモノを型崩れしないように、二人一組で洗っております。
洗い方は、水にさらした生地を順々に送りながら、専用の刷毛と溶剤で生地を丁寧に洗っていきます。また、シミ抜きを併用して行う場合は、熱によってシミが落ちにくくなるのを避ける為、洗い張り後の湯のし作業に行く前に、シミ抜きを行い、再度洗い張りを行うようにしております。
③ 水分の除去
洗い張りをされた反物を吸引機のついたローラーに乗せ生地にしみこんでいる水分を除去していきます。この時には、一切熱を加えませんので、シミ抜きを併用されている場合でもシミの定着をさけ処置しやすい状態にできるようにしております。
④ 染色作業
色やけをしている部分に染料をかけ修正を行っていきます。この際に、縫い代に入る部分もお直しする事ができますが、価格を抑えたい場合は、仕立てに支障が出ない部分まで染めていきます。
⑤ 日陰で自然乾燥
洗浄後、着物の汚れが取れているかをチェックした上で、乾燥室にて、直射日光を避け自然乾燥していきます。また、この際に適度に風を当てる事でクリーニング特有の匂い等も除去するようにしております。
⑥ 湯のし
生地は水に通す事で、幅や丈が縮んでしまいますので、専用の機会にて生地を整形し元の形に戻していきます。
⑦ 仕上げ
お仕立や、その後の保管に適した状態にするために、生地を仕上げていきます。
絹の繊維は、水分や熱によって縮む可能性がございますので、直接アイロンをあてることはせず、蒸気の吹きかけと吸引を同時に行いながら次回お召し頂いた際に気持ちよくお召し頂けるよう随所を確認しながら手仕上げで作業を行っていきます。
※お仕立が必要な場合、ここからご希望の形に仕立てを行っていきます。(仕立て代が別途必要)
※仕立てが必要ない場合は、端縫いされた反物の状態でお戻し致します。
⑧ 梱包・ご納品
移動中の水気を避ける為にたとう紙をビニールの袋でくるみ、移動中に着物がズレてシワにならないようにボールで挟み動かないように固定して梱包致します。
また、今回行った処置ないようについては、着物カルテ(処置内容などを記したメモ)を同封致しますので次回のお手入れまで保管して頂ければと思います。
※訪問や店頭での受け渡す場合は新しいたとう紙に入れた状態でお返しいたします。