着物についたカビの応急処置と注意点について
湿気の多い日本だけにカビはいたるところに発生致します。特に長い間喚起を行わず締まったままにしたタンスの中では着物にカビが発生している事も多くあります。それが着用前だと、もうどうしたら良いのか・・・という風になられる方も多くいらっしゃると思います。今回はそんな時の応急処置の方法とカビのお手入れについてご紹介していきたいと思います。
カビの状況。発生段階をチェックしよう。
カビを見分ける段階として、着物を包んでいる「たとう紙」に茶色い斑点が出ている第一段階。そして、着物に白い斑点が浮き上がっている第二段階。白い斑点が茶色くなり生地自体を変色させている第三段階とあります。まずは、現在の着物がどの段階にあるのかをチェックしてみましょう。また、一度カビが発生すると他のものにも移っている可能性がありますので、タンスの中を総ざらいされるのが良いかと思います。
第一段階のカビの場合の応急処置と注意点
たとう紙に茶色い斑点が出ているだけの状態であれば、まだ着物にカビは移っていない可能性があります。しかし念の為、風を通してカビ菌を飛ばしておく必要があります。
<カビ菌を飛ばす陰干しの注意点>
カビ菌は体内に入ってしまうと様々な病気の原因になってしまいます。特に免疫力の低い乳幼児や高齢者などが居る場合は必ず外で行うようにしましょう。しかし、外で行うと着物の焼けの原因にもなりますので、屋根があるベランダのカーテンレール等にかけ日差しが差し来ないようなところを選ばれるのが良いと思います。
(1)陰干しを行う前には必ずマスクとゴム手袋を着用するようにしましょう
(2)ベルベット素材などの凹凸がある柔らかい素材で着物の全体を撫でるようにし着物の上に付着したカビが合った場合でも除去できるようにしましょう
(3)日陰で風通しが良く他の方にカビの影響がない場所に欲し、扇風機をあてましょう
このような対処で概ね対処はできると思います。
第二段階のカビの場合の応急処置と注意点
白い斑点が出てしまっている場合は、着物専門のクリーニング店にお願いするのが良いと思います。しかし、すぐに着用しなければならない場合などは、第一段階で行った処置と同じような方法で入念に行えばある程度は大丈夫かと思います。また、においがきつい場合等はお香等でにおいをごまかすというような処置で急場をしのぐという事も出来ます。この際に消臭スプレー等は使わない方が良いです。市販されている消臭スプレーの中には水分を多く含んだ状態でなければ消臭効果が発揮されないものもありますので、着物に行うと水シミの原因になったりしてしまいますので急場の場合は避けるようにした方が良いと思います。
<カビ取りを入念に行う際の注意点>
・カビを除去する為に使う布はカビが付着したら随時取り換えながら行う事
・強い力を入れ過ぎると生地の中にカビを押し込んでしまうので優しく行う事
・水やお湯で落とすという方法もありますが着物には不向きですのでお勧めできません
・アルコール等による処置も染色を損なう可能性があるのでお勧めできません
第三段階のカビの場合
こちらについては、表面にあるカビを取り除いたとしても茶色い斑点が残ってしまいますので急場の着用は難しいと思います。この場合は着物専門のクリーニングをお願いするのが良いと思います。ちなみに、このような状態になったとしても洗い張りやカビ取り、染色補正を行えば着物はちゃんと元通りにすることができますのでご安心下さい。
カビが付いた際にお願いした方が良いお店
カビが付いた場合に丸洗いを勧められるお店があるという風に聞いたことがあります。しかし、カビは丸洗いでは落ちませんので、そのような事をおススメする店は避けた方が良いと思います。風を当てるという観点で言えば、除去できると思いますが、あくまで上記で述べた応急処置的な対応と言わざるを得ません。また丸洗いを行う機械にカビが付着してしまう可能性もあるので、クリーニング業者さんとしてもお勧めできないはずです。
着物以外のものにカビが付いた場合
よく帯がカビ臭いというお問い合わせを頂きます。帯は仕立てる際に帯芯を中に入れて仕立てを行いますが、この帯芯が綿や絹等を使用している事が多く、それが汗などの水分をすった状態で放置されてしまいカビが発生してしまうというケースがあります。帯の場合は内部的なカビが大半ですので、着物ように表面を応急処置する事ができませんので風をあてて出来るだけ匂いを飛ばすぐらいしかないと思います。
また、すぐの着用が無い場合は着物同様に着物クリーニング専門店に出されるのが良いと思います。ちなみに帯のクリーニング方法としては織の組織や使っている素材の関係で洗い張り等を行えない事もあります。この場合は帯芯を抜いて、新たなものに取り換える事としみ抜きのようにカビ取りを行っていく処置になると思います。
いかがでしたでしょうか?
日本の環境や着物という性質上、どうしても切ってっも切れないのがカビへの対応だと思います。しかし、1回1回の着用後にしっかりと陰干しを行ったり汗抜きの処置を行えば概ねこのような状況にはならないかと思いますので、着物の為にも処置を忘れずに行って頂ければと思います。